石蕗の花 永沢 達明
碑の掠れて丸し帰り花
末枯の園行き深めゆく思索
草庵を訪ふ人絶えず石蕗の花
大綿やつかみどころのなき話
医も薬も疎き家系や花八手
ライオンの目を細めゐる小六月
文豪をしのぶ館や冬日和
宮裏の馬屋に馬なし石蕗の花
叱る目のいつか微笑み冬ぬくし
大根煮て語尾柔らかくなつてをり
小六月 河辺 さち子
大綿の雲より千切れきたるかな
山荘に洛中望む冬日和
掛茶屋に二人の影や初時雨
一碗につなぐ会話や冬ぬくし
終活を説ける法話や小六月
君の座に猫踞る縁小春
茶の花の低き垣なす古刹かな
禅庭の明暗をなす片時雨
時雨傘杖とし愛宕山詣
振り仰ぐ先に果たして帰り花
板塀に古き町の名白粉花
青蘆の風に乗り来る舸子の唄
鎌足の眠れる山や銀河濃し
鱧切りの音小気味よし三代目
豆腐ひと揺れして沈む残暑かな
ながながと西行く貨車や街残暑
山田 恵美子
金森 教子
安田 富子
幸田 素子
松坂 由美子
長嶋 吐夢
樹木葬の枝切りに行く墓参かな
昼寝して思考回路は止まりけり
病院の帰りの黙や蟬時雨
浴衣着て淡く紅ひく初デート
木曽三川夏野の果てをめざしけり
含羞草閉ぢて明日は雨模様
松谷一枝
大野雅子
源甲斐隆博
佐々木啓川
嶋崎豊子
小坂康子