寺の萩 永沢 達明
落ち来る秋の水音岩に座す
曼珠沙華見ゆるとこまで母の手を
大木を仰げと伝へ寺の萩
爽やかや敗者にそと手差延ぶる
山門を開きて招く萩盛り
頰白の去ればまた来る堂静か
甃しづめし寺や萩の径
新月や黒柴の子の転がり来
会話なく過ぐる幸あり鉦叩
稚の泣く声遠ざかり蚯蚓鳴く
秋 桜 河辺 さち子
境内の風の綾なす秋桜
コスモスや五色の幕を煽る風
嫋やかに揺れて強か秋桜
コスモスの色の浄土となる古刹
秋天へ突き抜けてゐる児らの声
駆け上りきて一面の秋桜
クレパスで描くコスモスのみなピンク
揺れ合へるコスモスの丈迷路なす
コスモスを乱して児らの隠れんばう
コスモスの風に微睡む昼下り
夏めくや女医は白衣をひるがへし
軽暖や日向日陰と追うて行き
水分の神を崇めて田水張る
聖霊を宿す新樹や異人館
下闇や千人つか守る湾処風
蛍火の消え入りさうに息づける
野田 光江
足立 恵美子
小森 道子
岡本 京子
生島 陽子
嶋崎 豊子
夏めくや汽笛谺す峡の駅
でで虫や任せずにまた背負ひ込み
五月雨や京の千年鎮めたる
花苔の庭を抱きて鄙の寺
どの窓も開けて立夏の風を入れ
裏木戸をつと抜ける風夏めける
清水 正浩
年梅 道子
古谷 孝子
松原 由実
上土 優美子
木谷 博美