橋涼み 永沢 達明
水無月や湯元の槽の錆厚く
弟の鼻先へつと水馬
百貨店出てまた地下へ油照
海の日やあの日の吾子も父となり
氷水町家のかどの旗に入る
残照の橋涼みなる峡の宿
心音を聴き居る女医の日焼かな
夕菅の灯り湯宿へ辿りゆく
橋潜る右舷の灯火月涼し
夏の灯や異国の人と相席に
祇園会 河辺 さち子
流れくる祇園囃のターミナル
伝承の二階囃や闇を曳く
山鬮や裃に威を正したる
笛鉦の鉾町ごとの音色かな
八坂より冠位戴く鉾の稚児
京なれや日毎に暑さ弥増せる
鉾立の縄目に見惚れをりにけり
灯の入りて佳境となれり鉾囃
人波に沿うて宵宮詣かな
羅の襟足美しき人に付く
芽柳に風の存問はじまりぬ
霾や父が満州語る時
野遊や海見えしより旅ごころ
柳川を巡れば窓の吊し雛
雛祭軒を連ぬる鞆の浦
円空仏木目の襞に春の塵
尾崎 みつ子
蒲田 雅子
西村 操
荻巣 純子
清水 昌子
福田 日支朗
のどけしや電話につられ南予弁
木から木へ横切る影や初音聞く
城囲む土塁に立てば春の月
春宵や寮歌放吟賀茂川原
玄武洞神在すかに涅槃西風
麗かな日の塔頭の古色かな
二宮 桃代
生島 久夫
豊泉 白水
藤原 たけじ
古谷 孝子
松原 由実